意識調査「ダイビング事故は防げる?」からわかるインストラクターと一般ダイバーの意識差

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恩納村のビーチ(撮影:越智隆治)

こんにちは。高野です。
今回はダイビング事故(主に国内)に関する最後の質問。

「ダイビング事故は防ぐことができると思いますか?(全面的に防止は可能⇔全面的に防止不可能)」(現在での意識を4段階で回答)という質問についての結果をお話しします。

ダイビング事故は防ぐことができると思いますか(インストラクター)

ダイビング事故は防ぐことができると思いますか(インストラクター) n=127 欠損=7

ダイビング事故は防ぐことができると思いますか(一般ダイバー)

ダイビング事故は防ぐことができると思いますか(一般ダイバー) n=447 欠損=4

結果は、「ダイビング事故は防ぐことができると思いますか?」という質問に対して、「4(全面的に防止可能)」と回答したインストラクターは11%に対し、一般ダイバーは14%と、ほぼ変わらない回答でした。

「3」を加えた場合、ほぼ防止は可能ではないかと考えているインストラクター66%に対し、一般ダイバーは81%と、15%の開きがありました。

逆に、防止は不可能と感じているインストラクターは、「2」「1」を合わせると34%、それに対して一般ダイバーは19%という回答でした。

一般ダイバーに比べて、インストラクターの方が、事故を防ぐことは難しいと考えているようです。

ダイビング事故に対するインストラクターと一般ダイバーの意識の差

ここまで、5つの「ダイビング事故(主に国内)に関する質問」に対する調査結果を合わせ見た場合、インストラクターと一般ダイバーとの間には、事故や責任に関する認識に差があるということがわかります(仕事として捉えているか、遊びとして捉えているかにもよって、当然、差はあるとは思いますが……)。

しかし、この認識の差が、事故の誘因になっている可能性は捨てきれません。

ダイビング活動を「遊び」と捉えている一般ダイバーは少なくありません。
メディアや情報誌、各ダイビングショップの多くは、これから「遊び」としてダイビングを始めようとしている人や、既存のダイバーに対して、「楽しさ」を前面に打ち出したアピールをします(私もそうです)。

主な事故の発生要因には、「人的要因(人の行為が原因)」の他に、「環境要因(周辺環境の不備・不適切が原因)」と「活動要因(自己の可能性を追求するといった行為自体が原因)」があると言われています(吉田章:課外指導における事故防止対策,日本スポーツ振興センター調査研究報告書,p151-153,2010)。

自然環境の中で活動するうえでは、予見が難しい突発的な災害に見舞われる可能性もあることから、事故は無くすことはできないかもしれません。

しかし、海上保安庁などからの発表による事故原因を見ると、そのほとんどが人的要因であることから、一人ひとりが事故の誘引を認識し、その誘引を無くす努力をすることで、事故は減らせるのではないでしょうか。

ハイリスクでローリターンであるダイビングの仕事は、生業としていくのが厳しく、また、多くのお店で若手のインストラクターが育たない現状があります。そして、我が国において高齢化が進み、一般ダイバーにおいても活動の年齢層が高くなっていく中、身体的機能・生理的機能・心理的機能・感覚的機能が低下しているダイバーが増加していくことが予想される現状もあります。そのような背景の中で、各地で行われている集客のためのイベント開催や、事故防止・対策セミナー開催は、事故防止や業界発展のためにも、とても大切かつ重要なことだと思います。

見つめ直したい、危機管理の意識

しかし、ダイビングのマネジメント的研究を進める中、業界発展のために現在最も重要なことは、一人ひとりが本来あるべきCカードに見合った知識・技術を身に付けること、付けさせることなど、教育的観点からの指導現場での意識見直しが必要であると感じています。

これは、インストラクター、一般ダイバー双方の意識です(意識につきましては以前のお話をご参照ください)。

遠回りのように感じますが、意識を見直し、ダイビング業界の健全性を確立する(以前お話した各人の隙間を埋める)ことが、インストラクターやガイドが生業として生活できる環境、そして、一般ダイバーがより自立し、安心感(過信ではなく良い意味での自信)を持ってダイビングを楽しめる環境につながっていくのではないでしょうか。

その役割、責任を担っているのは、今活動している、そしてこれから活動しようとしているダイバー、ダイビング施設、指導団体、メーカー、メディア、旅行社など、業界に関わるすべてのものだと考えます。

縁起でもないことを言いますが、もしかしたら、貴方が、貴方のゲストが明日事故に見舞われるかもしれません。
それは私かもしれない……。

事故に見舞われたことを想像してみてください。

今一度、一人ひとりが自身の危機管理(不測の事態に対して事前に準備される、被害を最小限に食い止めるための対策:大辞林)について考えてみませんか?

そして、不足の事態にならないために「今何が必要なのか」「なりそうな誘引は何なのか」も考えてみませんか?

オーシャナで連載をされている、上野園美さん中田誠さんの著書でも危機管理についてお話されています。
ぜひ、頭の中でリンクしながら読んでみてはいかがでしょうか。

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writer
PROFILE
大学にて法学を学び、卒業後、某一部上場企業にて人事採用・研修を担当していたが、「人は自然と共に生きていくことが本来の姿である」と思ってしまい…退職。

都市型ダイビングショップを経験後、静岡県の熱海を専門に水中ガイド、コースディレクターとしてインストラクター養成などを行う。
また、潜水士として、海洋調査・水中撮影・ナマコ潜水漁・潜水捜索救難などでも活動している。
 
ある時、業界の発展、健全性の確立を考えるようになり、大学院へ進学してスポーツマネジメントについて学ぶ(学位:体育学修士)。
現在は、教育・指導の観点から、ダイビングのマネジメントについて研究している。
 
■「筑波大学 大学院」 体育系研究員 高度競技マネジメント研究室(山口香研究室)
■「文部科学省所管 財団法人社会スポーツセンター」マリンスポーツ振興事業部 専門職員
■「NPO熱海・自然の学校」理事 安全対策委員長
■「NPOユニバーサルダイビングネットワーク」理事 潜水捜索救難協会トレーニングディレクター
■「Office 海心(うみこころ)」代表
 
【学会発表・論文】
■「SCUBAダイビングにおける裁判事例から見た事故分析」
■「SCUBAダイビングにおけるヒヤリ・ハット調査から見た事故分析 -ハインリッヒの法則に基づいた観点から-」
■ 「SCUBAダイビング指導者育成における教育課程に関する研究 -中高齢者事故予防の観点から-」
他
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