世界の海洋生物、100万種にも上ることが判明 CoMLの調査で
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2010年10月4日、海洋生物の多様性と生態を解明する国際プロジェクト「海洋生物のセンサス(Census of Marine Life: CoML)」が10年間の調査活動を終えました。
この「海洋生物のコンサス(CoML)」は、世界80カ国、2,700人の科学者が参加したプロジェクト。アメリカのラトガーズ大学とNPOの研究者が10年前にスタートさせました。6億5000万ドル(約543億円!)の予算をかけて、微生物から大型哺乳類まであらゆる種類の海洋生物の生態(移動習性、個体数、餌など)を調べました。
Photograph courtesy Gary Cranitch, Queensland Museum
このプロジェクトにより、人類が記録した海洋生物は従来の23万種から約25万種に増えたものの、未知のものを含めた合計では100万種を超えることが推計されています(そのうち甲殻類が最も多く、全体の約5分の1を占めることも分かりました)。
また、魚類はこれまでに記録がある1万6764種が確認されましたが、まだ未発見の魚類も5000種に上ると推計され、微生物に関してはなんと約10億種に上るとされています。
どれも気が遠くなるような数字ですね。
国や研究所ごとにバラバラだった海洋生物のデータベースを統一するなど、地球規模での“海洋生物の目録”を作成。21世紀頭の時点での研究者の総力を結集させました。
最新の技術と機器のもとで素晴らしい成果を上げましたが、これでも海の全貌のごくごく一端を明かしたに過ぎません。
海のことは知れば知るほどに、「私たち人類はまだ何も知らない」ということを強く思い知らされることになりますね。
それでは、以下にCoMLが発表した写真をご紹介いたします。
Photograph courtesy Yoshihiro Fujiwara, JAMSTEC
日本の沖合にある海底火山から採取されたアルビンガイ属の巻貝。毛に覆われた殻がオシャレな帽子のように見えますね。新種とみられますが、まだ命名はされていません。
このアルビンガイは、高水圧・高温・暗闇という過酷な環境である深海の熱水噴出孔から見つかりました。栄養の一部は、エラに共生する微生物から得ているようです。
Photograph courtesy Yoshihiro Fujiwara/JAMSTEC
水深900メートル超の深海でクジラの死骸を貪っていたという、毛に覆われた環形動物(ミミズやゴカイの仲間)。日本の湾内で発見され、新種の可能性があります。これもものすごい形をしていますね!
多くのクジラは息絶えて海底に沈むと、死骸から豊富な栄養がしばらく放出されます。その“ご馳走”に群がる深海生物のほとんどが未知種と見られています。
Photograph courtesy Magda Blazewicz-Paszkowycz, University of Lodz
オーストラリア・グレートバリアリーフに生息し、軟甲(なんこう)綱に属する甲殻類。
綺麗な小エビのようなこの甲殻類は、成長しても1.3センチに満たず、カンガルーのように袋の中で育てられるそうです。サンゴ礁には、鮮やかな魚やサンゴのほかにも多数の“目には見えない生物”が生息しています。
海洋生物学者のナンシー・ノールトン氏はこう話しています。「それらの生物の多くは、ほとんど研究が進んでいない。今回新種が発見されたのも当然だ。サンゴ礁に生息する生物のうち、名前が付けられていない種は90パーセントにも上るのだから」
Photograph courtesy Magda Blazewicz-Paszkowycz, University of Lodz
オーストラリア沖のサンゴ瓦礫で群れが見つかった、半透明で脚が細いタナイス目(微小な甲殻類の1種)。新種と認定される可能性があります。
紅白模様がかわいらしいですね!
Photograph courtesy Kevin Raskoff, Monterey Peninsula College
「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーのような、ドングリ大の新種ヒドロクラゲ(学名:Bathykorus bouilloni)。北極域の調査で、遠隔操作無人探査機(ROV)が水深1,600mで数百匹の群れを確認しました。
Photograph courtesy Jan Michels
2006年に発見された、羽毛のような外観のカイアシ類の新種。陸上のムカデのような体ですね!
この新種(学名:Ceratonotus steiningeri)は、大西洋のアフリカ西部沖の水深5,000メートル付近に生息していましたが、大西洋南東部や太平洋中央部でも見つかっています。これだけ広範囲に分布することは珍しいようです。
プロジェクトの科学者は「こんな広範囲に分布する未知種の存在は意外だった。体長0.5ミリというサイズのせいかもしれない」と話しています。
このCoML、10年間に世界中で540回の探検調査が実施されましたが、まだ20%以上の海洋に手がつけられていません。北極や南極、東太平洋、そして深海などです。
最後に、シェフィールド大学のウェブ氏の言葉を載せておきます。
「センサスがきっかけとなり、海の生物多様性に理解が深まればいい。われわれの生活が海の生物にいかに依存しているか、その認識も改まると希望して いる」
CNN.co.jp:世界の海洋生物は推計100万種以上、大部分が未知の生物
未発見は75万種、10年越しの「海洋生物センサス」発表 | Reuters
海洋生物 25万種確認…研究者2700人、10年がかり : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
25万種の生物が世界の海に 初の海洋調査で確認 – テレ朝ニュース
海洋生物のセンサス:アルビンガイ – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
海洋生物のセンサス:環形動物 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
海洋生物のセンサス:新種の甲殻類 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
海洋生物のセンサス:半透明の甲殻類 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
海洋生物のセンサス:ヒドロクラゲ – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
海洋生物のセンサス:カイアシ類の新種 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
◇CoMLに関するこれまでの記事
CoMLが新たに深海生物の生態写真を発表 « スキューバダイビング.jp
続・CoMLが発表した深海の幼魚・幼生 « スキューバダイビング.jp
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